No.12 2016年3月発行 榎本 好宏 選 |
西日さす祖父の一字の蔵屋号 | 飯塚恒夫 | 客のこゑ上がり框に盆の花 | 露木敬子 | 落鮎の顎の大きく焼かれけり | 林 百代 | うしろ手に田畑見回る九月かな | 石井文子 | 守人の無きおくつきも洗ひけり | 岡本りつ子 | 頭注の長々とあり秋時雨 | 小澤瀧次郎 | 糸取りの母を迎へに下駄履きて | 金田弥生 | 蕎麦の花こきりこ節は戸を洩れて | 木村珠江 | 先づうるか舐めて精進落しかな | 小谷迪靖 | 鶏頭や井戸の蛇口の新木綿 | 斉藤 仲子 | あれこれと少し重たき八月来 | 上春那美 | カステラの粗目糖八月十五日 | 永井 環 | 冬瓜の煮含めるごと佳き事は | 中村いはほ | 声明の聞こえてきたり扇閉づ | 藤川三枝子 | 孔子像楷書の如く立ちて夏 | 宮下とおる |