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プロフィール
榎本好宏(えのもと よしひろ)
1937年─2020年 東京生まれ。
1970年「杉」創刊に参画。主宰 森澄雄に40年間師事し、編集長を18年務める。森澄雄死後「杉」を退会。
2010年 句集『祭詩』で第49回俳人協会賞受賞。
2014年 選者を務めた俳誌「會津」終刊後、俳誌「航」を創刊、主宰。
2015年 『懐かしき子供の遊び歳時記』で第29回俳人協会評論賞受賞。
読売新聞地方版選者。俳人協会名誉会員。日本文藝家協会、日本エッセイスト・クラブ各会員。「件」同人。
  

無意識下の己れの発現

  
 人間誰しもが、この世の中を生きていくために、沢山のテーマを持つことが大切であることは、改めて言うまでもありません。ところが、幸か不幸か人間は、心中にもう一人の自己を抱えています。これを私は、無意識下の自己と呼んでいます。
 もっと平易に言えば、「考える」という行為の大方は、意識下の己れですが、「感ずる」と呼ぶ領域の多くは、無意識下の己れとの出会いであるとも、私は思っています。
 しかし、言葉や俳句に置き替える折、折角無意識下の己れに出会えたのに、意識下の己れが、それを打ち消してしまっています。
 その、無意識下の己れとの出会いを私は、「促し」と呼んでいます。この言葉を私は、哲学者の森有正氏から学びました。
 人間には深い「促し」がある。何人もそれを否定できないであろう。「促し」は、ある意味で漠然としているように見える。しかし、人はそこから歩みはじめるのである。自己の認識などから歩みはじめるのではない。(『遥かなノートル・ダム』より)
 これが、私の言う無意識下の自己との出会いです。その自己の発現こそが、私ども「航」が標榜するところでもあるのです。
「航」創刊主宰 榎本好宏