第2回 航賞 受賞作品
「航」創刊を記念して創設した「航賞」も今年は第二回になる。もう少し多くの応募を期待したが、残念ながら第一回を下回る結果になってしまった。
応募作の大方は吟行句が多かったが、目働きの作品が多く、心の深奥を透過させた作品が少なかったことが残念である。
その点、「航賞」特選に選んだ相川マサ子さんの作品は、同じ吟行句でありながら、写生の技法がしっかりしていて、単に吟行の報告に終わらない技量が尽くされているところを評価したい。
選を終えてから仄聞したところ、相川さんは病に倒れ病床にあるという。この賞が、快癒の一助になることを切に願っている。
応募作の大方は吟行句が多かったが、目働きの作品が多く、心の深奥を透過させた作品が少なかったことが残念である。
その点、「航賞」特選に選んだ相川マサ子さんの作品は、同じ吟行句でありながら、写生の技法がしっかりしていて、単に吟行の報告に終わらない技量が尽くされているところを評価したい。
選を終えてから仄聞したところ、相川さんは病に倒れ病床にあるという。この賞が、快癒の一助になることを切に願っている。
特選 | 懸煙草 | |
相川マサ子 | ||
お降りの朱の三門増上寺 本郷に落第横丁亀の鳴く 屋根替の茅一束のかろさかな 春泥の上千本の矢倉みち 青葡萄神学校の昼下り 浅草に下馬の立て札日の盛り 正座して摺師の弟子の日焼かな ギヤマンに鬱の一滴落としけり 宵宮のをんな坂より宮司来る 郁子垣の縁なけれど墓に手を 糠床にめうが向田邦子の忌 懸煙草乾きし風の那須郡 浅草や幇間塚に秋の蝶 菊坂の質屋金魚屋寒旱 大嚔して百までを生きるかな | ||
佳作一席 | 火鉢舟 | |
太田直史 | ||
箸紙をとくや杉の香けふ雨水 軍艦の錆びや埠頭の壺焼屋 長梅雨や鎚の音聞く保線員 虫おさへに焼麩田楽夏帽子 御旅所の床几に碁打ち祭足袋 籤作る竹割る音や冬隣 枯葭の沼に鮒釣る火鉢舟 | ||
佳作二席 | 豊の秋 | |
石井公子 | ||
腰帯を締めて漁師の神楽かな 黴の香の脇侍や献灯もつとせよ 帯ゆるく母の忌日を踊るなり 灯を少し落とし踊の輪の残る 白桃のまことに重き故郷かな 栗剥いて男机を汚したる 観音の御丈見上ぐ豊の秋 | ||
佳作三席 | 旅の途 | |
宮下とおる | ||
秋暑し祭の跡の残りたる 大文字の大の跡見ゆ冷やし飴 並びたる庫裡の竈や萩の花 秋雨や舟潜りゆく葛西橋 草笛を吹けず老いたり厨事 金雀枝の巡礼の道乾きたる サングラス外して人を待つ顔に | ||
佳作四席 | 祭 膳 | |
渡辺幸弓 | ||
クローバーの起伏の果てや太平洋 蓮根の穴の吊目や祭膳 奪衣婆祭囃子を聞きゐたり ト音記号の形に結ぶ祭綱 蟬時雨古墳を鎮めゐたりけり 百足出づ鉈彫仏観てをれば 父母の墓日傘の如き雲の出づ | ||